所在調査 編所在調査 「雨に感謝」 編この調査は下請けみたいな調査だったんです。 知り合いから 「ちょっと頼まれてくれないかな・・・簡単な所在調査なんだけど」 「簡単て・・・どんな?」 「うん。僕の友人なんだけど、最近交際を始めた彼女が自宅で軟禁されてるって言うんだよ・・・」 「へ?軟禁?自宅で?」 「うん。詳しくはわからないんだけど、父親が極端に厳しいみたいで、男性と交際していると知って、家に閉じ込めてしまったらしいんだよ。」 「古い親父(オヤジ)だね~」 「最初は携帯電話でメールのやり取りをしていて、状況の報告があったみたいなんだけど、その携帯も取り上げられたらしくて、最後には、外出するときは母親か、叔母さんが常に一緒にいて監視されてると言ってたらしいんだよ」 「親父だけじゃなく、母親や叔母さんまでもか・・・」 「頼めるかな?」 「えぇ、いいですよ。やってみましょう!」 というわけで、その女性の所在と状況を確かめることに。 与えられた情報はとってもシンプル・・・ 対象者は20代前半の女性。 あと、住所・・・だけ。 写真は?・・・・・ない。 きっと、自分が調査するのが嫌だったんだと思うな・・・ とにかく次の日、朝から現場に行ってみることにしました。 教えられた住所地は田舎なんだけど、ちょっとした観光地。 とっても綺麗な川が流れていて、すっごく静かな昔ながらの街並みでした。 目的の家についてみると、そこは家じゃなくお店・・・ でも、お店といってもかなり古くから商売をされてるようで、すっごく立派なお屋敷といった感じ(何の商売かは内緒です) (はて、さて・・・どうしたものか・・・) こういう古い街、特に観光地は、下手に聞き込みなんかするとすぐに噂になってしまいますからね・・・ 街の大通りを行ったりきたりしながら頭を捻ってたんですが、どうも良い案が浮かばないので、思い切って店に入ることにしました。 こういうときは「なるようになる」です。 大きな暖簾(のれん)をくぐって中に入ってみると、タイムスリップしたみたいな感覚になりました。 置いてあるもの全てが古くて、どれを見ても骨董品に見える・・・ しばらく、店の雰囲気のよさに浸っていると、奥から中年の女性が顔を出しました。 「いらっしゃいませ~」 とっても上品に話しかけてきたその女性はゆっくりと腰をおろし、とっても綺麗な姿勢でお辞儀をしてくれました。 「古いお屋敷ですね~」 「はい、随分古いですよ。主人の何代も前からですからね。」 「そうなんですか~、いや~、立派ですね~」 「有難うございます。ここへは観光ですか?」 「えぇ。仕事の出張できたんですが、綺麗な街なんで、少し見ていこうと思って」 「そうですか。ゆっくりできればいいですのにね」 「そうですね~、もっとゆっくりしたかったな~、このお店は御主人とお二人で?」 「えぇ。たまに娘も店番をするときがありますが」 (おお~、娘か~。ということは母親だ!) 「そうなんですか~。家族で御商売ですと楽しいでしょうね?」 「そうでもないんですよ~。主人は結構口うるさいですからね・・・」 (お、ちょっと本音トークだ!) 「そりゃそうでしょうね~。こんな立派なお屋敷で御商売されてるんだから、しっかりされてるんでしょうね~」 「しっかりなのか、頑固なのか・・・」 (なかなか良い展開だ~、厳しいと言うより、頑固なんだね) 「今日は御主人は?」 「商店街の会合に行ってましてね。私が店番なんです」 「そうでしたか。お忙しいのにすみません。長々とお話して」 「いえいえ、またいつでもいらしてくださいね」 「はい、有難うございます」 そう言って店を出た途端、図ったように雨が降ってきたんです! それも大粒の激しい雨が! 僕は傘を持ってなかったので暖簾越しに・・・ 「すみませ~ん、雨が降ってきたんでここで少し雨宿りさせてもらってもいいですか~?」 「えぇ、どうぞどうぞ。中でお待ちいただいてもかまいませんよ」 「いえいえ、ここで結構です。たぶん、通り雨でしょうから」 そういって、店の軒先で雨宿りをさせてもらうことに。 すると、こちらに向かって女性が二人歩いてくるではありませんか! 一人は若く20代前半くらい、もう一人は中年の女性です。 (これは、もしかしたら、もしかするかも!) 僕は隠しカメラのスイッチをONにして様子を伺いました。 二人の女性はまっすぐこちらに歩いてきます・・・ 店の玄関まで来て、さしていた傘を閉じたとき、ようやく顔をはっきりと見ることができました。 若い女性は僕に軽く会釈をして中に入りました。 母親似!!間違いない!!この女性だ!! 僕は気づかれないようにカメラのアングルを調整しながらズーム! 中ではさっきの女性(母親)が出迎えてます。 ということはもう一人の女性は監視役の叔母さんかな? 女性たちの姿が店の奥に消えるまでカメラを回して、調査成功! それから間もなく雨が嘘のようにピタッと止んだんです! なんとグッドタイミング!! 調査が成功した以上、ここに長居は禁物です!! 僕はすぐさま車に戻り、家路についたのでした。 帰ってすぐにビデオを編集し、知り合いに連絡してテープを渡しました。 数日後、知り合いから連絡があり、ビデオに写っている女性が対象者であることが確認できました。 連絡はつかないけれども、元気そうでなによりと喜んでいたそうです。 もしあの時、僕が店を出ようとしたときに雨が降ってこなかったら、こんなに早い結果は出なかったでしょうね・・・ きっと、神様が見てて、僕の足を止めるように雨を降らしてくれたんでしょうね~ このときばかりは、「雨」に感謝感謝でした。 ちなみに、この対象者なんですけど、実はすっごい美人だったんですよね・・・ 依頼人がちょっとだけ羨ましく思えたりもしましたよ・・・ 二人の愛が、いつか、成熟するといいですね~ ジャンル別一覧
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